はじめに

0BSD(ゼロ条項BSD)ライセンスは、オープンソースライセンスの中で最も短く、最もシンプルなライセンスの一つです。MITライセンスよりもさらに短く、条件が一切ないという驚きの特徴を持っています。

この記事では、0BSDライセンスの原文を一文ずつ丁寧に読み解いていきます。「なぜこんなに短いのか?」「条件がゼロとは具体的にどういうことか?」をわかりやすく解説します。

※0BSDライセンスの概要や実践的な使い方については、0BSD (Zero-Clause BSD) ライセンスとは?究極にシンプルなオープンソースライセンスをご覧ください。

0BSDライセンス原文・和訳

原文を確認したい方はこちら:

原文:
https://opensource.org/license/0bsd

日本語訳:
https://licenses.opensource.jp/0BSD/0BSD.html

以下では、0BSDライセンスの原文を一文ずつ、丁寧に読み解いていきます。

ライセンス全文

まず、0BSDライセンスの全文を見てみましょう。

原文:

Zero-Clause BSD

Permission to use, copy, modify, and/or distribute this software for
any purpose with or without fee is hereby granted.

THE SOFTWARE IS PROVIDED “AS IS” AND THE AUTHOR DISCLAIMS ALL
WARRANTIES WITH REGARD TO THIS SOFTWARE INCLUDING ALL IMPLIED WARRANTIES
OF MERCHANTABILITY AND FITNESS. IN NO EVENT SHALL THE AUTHOR BE LIABLE
FOR ANY SPECIAL, DIRECT, INDIRECT, OR CONSEQUENTIAL DAMAGES OR ANY
DAMAGES WHATSOEVER RESULTING FROM LOSS OF USE, DATA OR PROFITS, WHETHER IN
AN ACTION OF CONTRACT, NEGLIGENCE OR OTHER TORTIOUS ACTION, ARISING OUT
OF OR IN CONNECTION WITH THE USE OR PERFORMANCE OF THIS SOFTWARE.

新人君

わあ、本当に短いですね!たった3つのパラグラフだけですか?

ossan

そう。全体でわずか100語程度なんだ。注目してほしいのは、他のライセンスにある「以下の条件を満たす場合」という文言が一切ないこと。これが0BSDの最大の特徴だよ。

新人君

著作権表示はないんですか?

ossan

良い質問だね!0BSDライセンス原文には著作権表示(Copyright (c) [年] [名前])は含まれていないんだ。各プロジェクトがこのライセンスを使うときに、任意で追加することはできるけど、ライセンス本文の一部ではないんだよ。そして重要なのは、利用者がそれを残す義務もないということなんだ。

ブロック1:「何をしてもOK、条件なし」の部分

原文:

Permission to use, copy, modify, and/or distribute this software for any purpose with or without fee is hereby granted.

和訳:

いかなる目的においても、有償・無償を問わず、本ソフトウェアを使用、複製、修正、及び/または頒布することを許可します。

新人君

これって、要するに「好きに使っていいよ」ってことですか?

ossan

そうだね!もっと具体的に言うと、このソフトウェアを手に入れた人は次のようなことが全部できるんだよ:

  • 使う(use – 個人でも商用でも自由に使える
  • コピーする(copy) – 何個でも複製できる
  • 改造する(modify) – 自分好みに変更できる
  • 配る(distribute) – 他の人にあげたり公開したりできる

そして「for any purpose(いかなる目的でも)」「with or without fee(有料でも無料でも)」とあるから、商用利用も、販売も、全部OKなんだ。

新人君

MITライセンスと似ていますね。

ossan

そう。大きな違いは、MITライセンスには「subject to the following conditions(以下の条件に従うことを前提に)」という文言があるけど、0BSDにはその文言が一切ないこと。つまり、この許可に条件が付いていないんだよ。

MITライセンスでは「著作権表示とライセンス文を含めること」が条件だけど、0BSDにはそういう要求が一切ないんだ。

ブロック2:「保証はないよ」の部分

原文:

THE SOFTWARE IS PROVIDED “AS IS” AND THE AUTHOR DISCLAIMS ALL WARRANTIES WITH REGARD TO THIS SOFTWARE INCLUDING ALL IMPLIED WARRANTIES OF MERCHANTABILITY AND FITNESS.

和訳:

本ソフトウェアは「現状有姿」で提供され、作者は商品性や特定用途への適合性を含む、本ソフトウェアに関する明示的・黙示的を問わない全ての保証を否認します。

新人君

 「現状有姿」って何ですか?

ossan

簡単に言うと「今ある状態のまま」ということだよ。つまり:

  • 「ちゃんと動きます」という保証はしない
  • 「あなたの目的に合ってます」という保証もしない
  • 「バグがありません」とも言わない

中古車を「現状渡し」で買うのと同じで、「今この状態で渡すけど、あとは自己責任でね」ということ。作者は「これ使ってね!」と提供はするけど、「完璧だよ!」とは約束していないんだ。

新人君

「DISCLAIMS(否認する)」って強い言葉ですね。

ossan

そう。「保証しません」と明確に宣言しているんだ。法律上自動的に付いてくる保証(商品性や特定用途への適合性)すら、「ありません」と言っているんだよ。

ブロック3:「問題が起きても責任は取れないよ」の部分

原文:

IN NO EVENT SHALL THE AUTHOR BE LIABLE FOR ANY SPECIAL, DIRECT, INDIRECT, OR CONSEQUENTIAL DAMAGES OR ANY DAMAGES WHATSOEVER RESULTING FROM LOSS OF USE, DATA OR PROFITS, WHETHER IN AN ACTION OF CONTRACT, NEGLIGENCE OR OTHER TORTIOUS ACTION, ARISING OUT OF OR IN CONNECTION WITH THE USE OR PERFORMANCE OF THIS SOFTWARE.

和訳:

作者は、契約、過失、その他不法行為を問わず、本ソフトウェアの使用または性能に起因または関連して生じた、使用機会の喪失、データの喪失、利益の喪失を含むあらゆる特別損害、直接損害、間接損害、結果的損害、その他いかなる損害についても、一切の責任を負いません。

新人君

これってどういうことですか?

ossan

さっきのブロック2が「ソフトウェア自体の保証はしない」という話だったのに対して、このブロック3は「使った結果起きたことの責任は取れない」という話なんだ。
例えば:

  • このライブラリを使っていたらバグでデータが消えた
  • このソフトを導入したら会社のシステムが止まって損失が出た
  • セキュリティの脆弱性があって情報漏洩が起きた

こういう場合でも、作者に損害賠償を請求したり訴えたりはできないということ。

新人君

「IN NO EVENT(いかなる場合も)」って、すごく強い表現ですね。

ossan

そう。法律文書で使われる最も強い否定表現の一つなんだ。「どんな状況でも、絶対に責任を負わない」という意味。

具体的には、直接損害、間接損害、データの喪失、利益の損失など、あらゆる種類の損害について責任を負わないと言っているんだよ。だからこそ、無料で自由に提供できるんだね。

まとめ

0BSDライセンスの原文を読み解いてきましたが、いかがでしたか?

重要なポイントをおさらい:

  1. ブロック1: 何でもできる自由(条件なしがポイント)
  2. ブロック2: ソフトウェア自体の品質は保証されない
  3. ブロック3: 使用によって生じた損害の責任も負わない

構造は極めてシンプル:

  • 許諾(何でもOK、条件なし – たった1文!)
  • 免責(保証なし、責任なし – 作者を守る)

他のライセンスとの最大の違い: MITライセンスには「著作権表示とライセンス文を残してください」という条件があるけど、0BSDにはその条件すらないこれが唯一にして最大の違いなんだ。

0BSDライセンスの本質: 「完全に自由に使ってください。でも、何が起きても責任は取れません。

という、究極の自由と完全な自己責任のライセンスでしたね。

原文を理解することで、0BSDライセンスをより安心して使えるようになったはずです。ライセンスを正しく理解して、オープンソースの世界を楽しみましょう!


この記事は一般的な情報提供を目的としており、法的アドバイスではありません。具体的な法的問題については、専門家にご相談ください。